史料にみる讃岐の近世
ISBN:9784863870093、本体価格:1,800円
日本図書コード分類:C1020(教養/単行本/歴史地理/歴史総記)
300頁、寸法:148×210×18mm、重量486g
発刊:2010/11

史料にみる讃岐の近世

【あとがき】
 香川大学を定年退職した後、平成15年4月からさぬき市志度にあります徳島文理大学文学部文化財学科(香川校)に勤務していましたが、この度3月末日をもちまして再度の定年退職ということになりました。7年間自宅から志度まで、コトデンとJRを乗り継いで1時間余かけて通勤しました。
 4年目の秋に体調を崩し、2か月近く入院しましたが、退院後は文化財学科の先生方のご配慮をいただいて、その後は何とか研究を続けながら学生の教育・研究指導に当たることができ、無事に退職の日を迎えることができました。文化財学科の先生方をはじめ在職中御世話になった方々に厚くお礼を申し上げます。
 現在地方の私立大学は、少子化の荒波の中でその生き残りをかけて大変な時期にありますが、都会の大学にない地方の大学のもっている良さを再認識し、それを学生の立場から大学のありかたを再構築していくことが、地方の大学にとって大切なのではないかとも思ったりしています。文化財学科をはじめ文学部がこの困難を乗り切って行かれることを心から祈念しています。
 7年間を振り返ってみますと、香川大学教育学部時代から関心をもっていました文化遺産の保存の問題を、文化財学科の学生たちとともに考えることができたことは大変有意義な日々でした。また文化財学科の春と夏の恒例の尾道の西國寺の調査は、私にはこれまで縁がなかった寺院の典籍調査という、全く専門外の分野での有意義な経験になり、多くの新しい知見を得ることができました。
 そしてこの間、自治体史に関しては『大野原町誌』・『高瀬町史』の編纂に関与できましたし、研究面では香川大学に赴任以来進めてきた讃岐の藩政について執筆してきたものを、『藩政にみる讃岐の近世』・『近世讃岐の藩財政と国産統制』としてまとめることができました。また私の卒業論文以来の研究テーマであった幕末維新期の佐賀藩について、13年余前の拙著『幕末期佐賀藩の藩政史研究』を刊行して以来宿題として残されていた、その続編ともいうべき『佐賀藩と明治維新』をようやく出版にこぎつけました。このようにこの7年間は私にとりまして大変充実した時期でありました。
 徳島文理大学を退職するに当たって何か記念にまとめたいと思っていましたが、これまで高松藩の砂糖関係の史料を中心に、讃岐の近世に関していくつか史料を紹介してきました。それらに、いずれ活字化したいと準備をすすめていてまだ紹介していないものを加えて、史料集を刊行することにしました。これからの讃岐の近世史の研究に少しでも役に立つことができれば幸いです。
 本書の構成については、史料の内容が関係していると思われるものをまとめて、「地域と歴史」・「生駒藩と丸亀藩」・「高松藩と砂糖」に整理しました。史料を掲載した雑誌等は次のとおりです。
〔地域と歴史〕
 1 小豆島大坂城石丁場跡文書(原題「小豆島大坂城石丁場関係文書」『香川大学一般教育研究』第26号、昭和59年)。
 2 高松藩初期の寒川郡地方文書(新稿)。
 3 寛政二年「芦脇井関一件願留」(抄)(原題「芦脇井関水論資料〈寛政二、三年〉『郷土の自然教材による環境教育の実施研究』、昭和62年)。
 4 天保四年の平井出水水論史料(原題「『平井出水』天保期水論関係文書の紹介」)高松市教育委員会『弘福寺領讃岐国山田郡田図比定地域発掘調査概報・Ⅳ』、平成5年)。
 5 天保七年「此度大内郡騒動」(原題「天保七年十二月『此度大内郡騒動』(『香川史学』第14号、昭和60年)。
〔生駒藩と丸亀藩〕
 6 寛永十六年「生駒家分限帳」(新稿)。
 7 生駒騒動文書(原題「『生駒騒動』関係史料」『香川大学教育学部研究報告』第Ⅰ部第101号、平成9年)。
 8 天明元年「丸亀藩伝奏馳走役ニ付御用銀覚書」(新稿)。
 9 丸亀藩砂糖関係編年史料(新稿)。
〔高松藩の砂糖〕
 10 天保八年「代笏」(抄)(原題「天保八年『代笏』の高松藩砂糖関係史料」『香川史学』第33号、平成18年)。
 11 安政二年「砂糖方御趣法留」(『香川史学』第21号、平成4年)。
 12 明治21年「旧高松藩砂糖為替金始末」(『香川史学』第8号、昭和54年)。
 13 「讃岐砂糖起源沿革盛衰記」(『香川大学一般教育研究』第20号、昭和56年)。
 歴史の研究は史料に基づかねばならないことはいうまでもありませんが、これまでの讃岐近世史の研究を通して、史料の的確な解読と正しい解釈が重要であることを強く感じています。ここに紹介しました史料も読みを誤っているものも有るかと思いますが、お気づきの点は修正していただけば有り難く思います。そして讃岐の近世史研究の今後の発展のためにも、近世文書が大切に保存され少しでも多く活字化されて、研究者が共有して研究を進められるようになってほしいと願っています。とともに近世文書のみならず、讃岐の歴史に関する広い分野にわたる史・資料が、後世にまでしっかりと伝え残され、讃岐の歴史の研究の発展に生かされることを切望しています。
 本書に掲載した史料の閲覧に際しましては、小豆島土庄の笠井家、同じく小海の三宅家、さぬき市富田の有馬家、高松市林の真鍋家、さぬき市寒川の田中家、善通寺市弘田の長谷川家、三豊市上勝間の安藤家、および東京大学史料編纂所、国立公文書館内閣文庫、国文学研究資料館、上越市高田図書館、熊本大学永青文庫、山口県立文書館、香川県立文書館、香川県立ミュージアム、瀬戸内海歴史民俗資料館、鎌田共済会郷土博物館など、多くの方々や施設に大変お世話になりました。深く感謝致します。
 なお、私事にわたり恐縮ですが、附録として香川大学退職後の私の研究内容などについて収載させていただきました。ご海容下さいますれば幸いです。
 本書は既刊の拙著『地域にみる讃岐の近世』・『藩政にみる讃岐の近世』に続いて、「讃岐の近世」の三冊目となります。カバーの写真は香川県立ミュージアムの胡光氏のご協力を得ました。
  平成22年8月  高松にて  木原 溥幸

【目次】
〔地域と歴史〕
 1 小豆島大坂城石丁場跡文書
 2 高松藩初期の寒川郡地方文書
 3 寛政二年「芦脇井関一件願留」(抄)
 4 天保四年の平井出水水論史料
 5 天保七年「此度大内郡騒動」
〔生駒藩と丸亀藩〕
 6 寛永十六年「生駒家分限帳」(写)
 7 生駒騒動文書
 8 天明元年「伝奏馳走役ニ付御用銀覚書」
 9 丸亀藩砂糖関係編年史料
〔高松藩の砂糖〕
 10 天保八年「代笏」(抄)
 11 安政二年「砂糖方御趣法留」
   補遺・「但馬屋小兵衛申上書」(写)
 12 明治二十一年「旧高松藩砂糖為替金始末」
 13 「讃岐砂糖起源沿革盛衰記」
   補遺・「讃地砂糖略史」
附録
あとがき

【著者紹介】
〔著者〕
木原 溥幸