昭和わたしの証言Ⅰ 再版
ISBN:9784863871212、本体価格:1,400円
日本図書コード分類:C0023(一般/単行本/歴史地理/伝記)
180頁、寸法:148.5×210×9mm、重量233g
発刊:2020/08
【まえがき】
昭和という元号が平成になって早くも20年が経過した。大正は15年12月25日で終わり昭和になった。大正は第一次世界大戦、米騒動、関東大震災と明治と違った動乱の時代であった。
しかし昭和も経済恐慌に見舞われ、一方、大陸での覇権争いから小競り合いが続き、軍部の台頭、海軍将兵による政府要人暗殺の五・一五事件などが起き、さらに満州事変勃発、満州帝国の建国、第一次上海事変の勃発というようにきな臭い国際情勢が続いた。
11年2月26日には陸軍の過激派による政府要人襲撃の二・二六事件が起きる。そして支那事変のちに日中戦争と呼ばれる戦争が始まり、続いて運命の16年12月8日を迎えるのである。米英に対する宣戦布告である。大東亜戦争といわれた第二次世界大戦勃発である。
この年、尋常高等小学校は国民学校となり、生徒たちは少国民と呼ばれ挙国一致の思想を叩き込まれる。多くの若者が戦場に派遣され4年8ヶ月という未曾有の大戦に巻き込まれる。
そして20年8月広島、長崎に原子爆弾が投下され、何十万人もが殺戮され国内主要都市も空襲で壊滅、15日ついに天皇が終戦の詔勅を放送、戦争の時代にピリオドが打たれる。
アジア各地に展開された戦争に出陣した将兵、さらに中国大陸や南方各地に出征していた将兵も復員となり満蒙開拓に移住していた人々も引揚船によって帰国していった。
ソ連はわずか一週間の参戦で千島列島、樺太を手にし数十万人の日本兵を抑留、シベリアの開発に酷使した。彼らの中で帰国できずかの地で亡くなった人も多く異国の丘という墓地には数多くの日本兵の墓石がある。
こういった往時の出来事を歴史のかなたに葬ってしまっていいものだろうか。歴史に記録されていない記憶つまり口伝も含めて伝えて行かないといけないだろう。そこで昭和文化研究会を結成、庶民の記憶をつづってみたのが本書である。
西岡幹夫、津森明の両人が友人知己に声をかけて昭和戦前、戦中を中心に証言してもらった。第二次大戦の敗戦によって世の中は180度変わったともいえる。言葉一つ見ても大東亜戦争という言葉は死語になったし言葉だけでも数百語が忘れられている。「欲しがりません勝つまでは」などの標語も後期高齢者でないと知らない時代になってきた。
出版に際しては執筆者の一人でもある池上任氏に格段のご尽力を頂いたし、先に上梓の「昭和の忘れ草」なども参考にした。
平成21年孟夏 執筆者代表 津森 明
【あとがき】
昨今、映画、音楽、のみならず、テレビにおいても昭和時代の作品が好評で“昭和レトロブーム”という活字すら目にします。これらは、昭和初期生まれの人々には“物はなかったが、精神的には満たされていた時代”を思い起こさせ、また、昭和を知らない若い人びとにも何か懐かしさを感じさせるようです。昭和期に端を発する負の課題も残っていますが、現代社会が見失ったものを気づかせてくれることも確かです。
今回、昭和恐慌、さらに戦中、戦後を体験した19名の方々に、当時の社会情勢や生活環境を加味しながら“昭和、私の証書”を執筆して頂きました。
これらの原稿を拝見しますと、山河、家族、父母、学童期の思い出が多く語られています。幼い日の故里の思いは永遠なのでしょう。次に、戦時下の本土、また、植民地の外地における暮らし、旧制中学における生活や学徒動員の実態、様々な戦争体験、高松空襲の恐ろしさ、玉音放送と終戦など、さらには戦後の混乱期における辛苦の時代などが生々しく綴られています。ここには、パラダイムの大転換の中、真剣に生きてきた各自の証しが見られます。それぞれに迫力があり、また、あまり知られていないことも垣間見られ、新しい興奮すら覚えます。読んでいるうちに、それぞれが自分自身の出来事のように感じるから不思議と言えましょう。加えて、ここには異口同音に、わが国の現在さらに未来に対する警告が読み取れます。
歴史は、歳月に流されながら、われわれの一人一人の手によって作られるのでしょう。そして、歴史に記録されていない記憶を伝えることも極めて意義のあることです。戦前生まれが高齢化し、現在、4人のうち3人は戦後生まれとなりました。したがって、われわれは“昭和期の貴重な証言”を引きつづき記録したいと考えております。
最後に、本書がわが国の昭和期を検証し、現在ならびに未来を考える縁となれば望外の幸せです。また、われわれの企画に賛同され、ご多用中にもかかわらずご執筆いただいた各位に深甚なる謝意を表すると共に、厚く御礼申し上げます。
平成21年4月吉日 執筆者代表 西岡 幹夫
【目次】
まえがき(津森 明)
ジャーナリストのひとり旅(藤井 國夫)
人生の大半を国防に(近藤 一視)
思いつくままに(池上 任)
昭和、日々の思い出(三宅 洋三)
太平洋戦争と佐賀市立勧興国民学校の思いで(糸山 東一)
鎮魂の譜(藤井 洋一)
少国民から共学へ(津森 明)
高松高校で長期勤務(畠山 武史)
消えゆく生き物たちを見つめて(山本 正幸)
空襲と空腹の学徒動員(大西 泰次)
戦時下の暮らし(新名 重夫)
一場の夢(森 實)
昭和 私の証言(太田 正臣)
昭和わたしの証言(陶 昇)
昭和わたしの証言(相谷 勝一)
千変万化パラダイムシフトの時代に生きて(小林 宏暢)
遠き記憶(西岡 幹夫)
昭和わたしの証言(吉峰 泰夫)
私の昭和史(元屋 奈那子)
執筆者一覧
あとがき(西岡 幹夫)
【著者紹介】
〔編著者〕
津森 明
西岡 幹夫
〔著者〕
藤井 国夫
近藤 一視
池上 任
三宅 洋三
糸山 東一
藤井 洋一
畠山 武史
山本 正幸
大西 泰次
新名 重夫
森 實
太田 正臣
陶 昇
相谷 勝一
小林 宏暢
吉峰 泰夫
元屋 奈那子