小学校英語指導の実際 再版
ISBN:9784863871342、本体価格:1,500円
日本図書コード分類:C1037(教養/単行本/社会科学/教育)
124頁、寸法:148.5×210×7mm、重量176g
発刊:2020/09
【はじめに】
英語教育の改革が進められています。その中で今般(平成29年3月)、学習指導要領が改訂され、小学校外国語活動が中学年(3・4年生)で実施するよう早期化、さらに高学年(5・6年生)においては小学校外国語科が創設され、教科化されました。小学校における英語教育が本格的に始動することとなりました。
ここまでの道のりで、平成4年に、大阪の地に「研究開発校(英語活動)」として、2校の小学校が指定を受け、本格的な研究が始められてから、ここまで、約25年、四半世紀という時間を要しました。
小学校、中学校、高等学校、そして大学まで、外国語教育の主要な地位を「英語」という言語が占めることとなります。これから、この地球上で生起するであろう事は、誰しも正確に予見することはできないでしょう。しかし、人間は「ことば」をもった、そしてそれを駆使して他者と意思疎通しながら、他者を理解し、また、その過程で、時として、自分自身をも深く理解することのできる能力をももちえた生き物です。それによってこの地上で、また、来たるべき将来は、宇宙であるかもしれませんが、他者と共に生きる、共生するすべ(術)を生まれながらに有しているのだと思います。
誰から与えられたものか定かではないのですが、この「言語」、それも、外国語を学ぶということは、誠に貴重であり、必要なことであると思います。ある人に、「外国語を学ばなくなった民族は亡びる」とまで言わしめたものは、人間の本質に深くかかわるものであるかもしれません。
本書は、この時期、小学校英語の早期化、教科化に向けて、準備に余念のない学校現場、さらに、これから将来、小学校の教員になることを目指している学生の皆さんを対象にしたためました。
本書の概要を齋藤が、そして理論面は、主に宮城教育大学の鈴木渉先生に、実践面は、香川県直島町で昭和63年(1988年)に町が独自にALTを配置して、前述の大阪に研究開発校が指定を受ける以前から、小学校からの英語指導に取り組まれております香川大学教育学部非常勤講師の濵中紀子先生に執筆をお願いいたしました。
さらに、学校全体として、外国語活動にどう取り組むか、また、その研修については、現在の直島小学校長三木正英先生、元同小学校教頭で現在、香川大学教職大学院教授の植田和也先生、香川県教育センター主任指導主事の山下美紀先生にお願いし、最後に、中学校の英語教師の立場から、小学校英語に対する期待を観音寺市立豊浜中学校の大西範英先生が執筆してくださいました。
本書は、小冊子でありながら小学校英語の歴史や改訂学習指導要領の要点などをまとめ、さらに、具体の指導法についても、特に文字指導や読むことの指導については、その根本となる考え方や方法についても、ひとつのものにしぼることなく、それぞれの先生方がおかれた場所、環境、子どもたちの様子をかんがみて工夫していただける際の参考になるものとしております。
齋藤 嘉則
【おわりに】
本書をここまでご一読いただきありがとうございます。ご感想、ご意見をお聞かせいただければ幸いです。「はじめに」にありますように、本小冊子は、小学校英語の内容をできるだけコンパクトに、そして、読者の皆さんに理解していただけるように、執筆者一同、それぞれが心がけてまとめたものでございます。
現在、教育実践の在り様には、教師の経験に拠るだけでは良しとしないとの考え方がありますし、また、一方で、教育理論を大上段にふりまわして論ずる教育論には批判的であるなど、子どもの実態を踏まえた実践と理論のバランスがとれた教育活動、一歩進んで、理論と実践の架け橋、往還、融合が強く志向されている今日この頃です。どなたかがお話しされたことに、「理論なき実践は盲目的であり、実践なき理論は空虚である」といわれる所以かもしれません。
本小冊子も理論編と実践編に分かれておりますが、理論と実践が歩み寄ることそのものが両者の架け橋であり、往還であり、融合であると考えます。その意味で、本書の読者の皆さんは、ご自分のおかれている所から、理論編と実践編を批判的に読まれ、目の前にいる子どもたちにとって、如何なる考え方、手立てが最も適切なものなのか判断いただき、本小冊子を活用していただければ幸いです。理論と実践をつなぐものは、ひょっとすると私たちの目の前にいる子どもたちの姿、子どもたちの実態にあるのかもしれません。
最後になりましたが、本小冊子が学校で、また、これから小学校教員を希望する学生の皆さんのお役に立つことができることを願ってやみません。本小冊子を刊行するにあたり、直島町教育委員会教育長 原 貴 様には、多大なるご理解とご協力を賜りました。また、執筆依頼をご快諾いただいた執筆者の皆様、編著者が無理難題を申しましたことにも快くお引き受けいただました。この場を借りで御礼申し上げます。ありがとうございました。
齋藤 嘉則 濵中 紀子
【目次】
はじめに
第1章 理論編
I 本当は、古くて新しい小学校英語~実は古い! 小学校英語の歴史~
II 学習指導要領解読
III 小学校英語のための第二言語習得理論入門
IV 音声指導の要諦
V 読むことや書くことの理論と実際
VI 第二言語習得研究の動向 ~近年の研究を読み解きます~
第2章 実践編
★実りある実践につなげるために(解説)!
VII 小学校英語(中学年)指導の実際
VIII 小学校における「読むこと」「書くこと」に関する学習
IX 小学校英語(高学年)教科としての指導の実際
X 小学校英語に学校全体で取り組むための視点
XI 小学校英語 教科化へ向けて学校としての取組~英語や外国語文化にふれる機会や環境整備~
XII 小学校英語への期待
資料集
おわりに
執筆者一覧
編著者紹介
【著者紹介】
〔編著者〕
齋藤 嘉則
濵中 紀子
鈴木 渉
〔著者〕
植田 和也
大西 範英
三木 正英
山下 美紀
〔イラスト〕
佐々木 啓介
鈴木 祐子
上枝 真実
〔写真〕
直島町立直島小学校
宇多津町立宇多津北小学校