道徳科を要とした道徳教育の推進 ~校内研修の充実を求めて~
ISBN:9784863871625、本体価格:1,300円
日本図書コード分類:C1037(教養/単行本/社会科学/教育)
182頁、寸法:148.5×210×9mm、重量218g
発刊:2022/05

道徳科を要とした道徳教育の推進 ~校内研修の充実を求めて~

【はじめに】
道徳の教科化の過程において、量的確保、質的充実や改善、学校間格差、教師間格差の問題が議論されてきた。これらの改善や各教員の道徳教育に対する意識向上には、道徳教育に係る校内研修の充実が欠かせない。
小学校においては、平成27年4月1日の特別の教科 道徳の移行措置開始から早や7年、平成30年の全面実施から4年が経過した。中学校でも同じく移行措置から6年、全面実施後3年の経過である。折しも、「『令和の日本型学校教育』を担う新たな教師の学びの姿の実現に向けて 審議まとめ(2021)」において、校内研修や授業研究の重要性が改めて指摘された。これまでも学び続ける教員像など教員の自主的・自律的な研修への参画が期待されてきたが、同時に研修の内容や方法、時間の問題等、多くの点があげられてきた。
さて、学校における道徳科の授業の量的確保だけでなく、質的充実はどのような状況であろうか。また、教師間格差や学校間格差が見られると指摘された点はどのように改善や解決が図られているのだろうか。それらの問題の大きな鍵となるのは、校内研修の充実であると考える。一方で働き方改革が叫ばれる中、校内研修の時間設定も厳しい状況である。
本著は、そのような状況も踏まえながら、管理職や道徳教育推進教師、道徳主任、研究主任など、校内研修を推進するうえで、キーマンとも言える皆さんに分かりやすく実践の一助となることを心がけて編集した。
是非、本著を読みながら自校の道徳教育や自らの道徳科の授業を念頭に描きつつ考えてほしい。例えば、あなたが校内研修等で道徳科の授業を参観すれば、何が最も気になるだろうか?そのようなことを校内で気軽に話してみたい。
また、次のような点を考えながら、自校の道徳教育の現状や課題を見つめ直すことから始めてもよいだろう。
 ①今年度、校内で道徳教育に関する研修はありましたか。
 ②管理職や道徳教育推進教師は、各先生方の不安や困り感を具体的に把握できていますか。
 ③日常の授業を互いに参観したり、公開したりすることが気軽にできそうな学校ですか。
 ④学校評価において、道徳教育の項目は明記されていますか。
 ⑤道徳教育の推進において家庭や地域社会との連携・協働を感じられますか。連携において何を大切にしているのか共通理解は図られていますか。
大切なことは、自校や子どもの現状を踏まえて、具体的に改善や実践の手立てを検討していくことである。
昭和33年に「道徳の時間」が特設されて、道徳教育の充実において多くの課題を抱えながら、その充実発展が期待されてきた。特別の教科 道徳のより一層の充実がなされるためにも、各学校での道徳教育に係る校内研修が現状の課題を把握しながら、実情に応じて一歩一歩推進されることを応援したい。
各校で道徳科を要とした道徳教育を推進する際の原動力となる様々な立場の先生方にとって、道徳教育に係る校内研修の充実につながる書となればと願っている。さらには、学校教育活動全体で取り組む道徳教育の充実、そして児童生徒の道徳性の発達や健全な成長につながってほしいと祈願する。校内研修を組織として展開する道徳教育推進の一助となれば幸いである。
  令和4年5月1日  植田 和也
【おわりに】
2021年度、ヒノキやスギなど様々な木材の年輪を幼稚園の園児とともに見る機会があった。園児がその丸い年輪を手でなぞっている姿に、この子たちの将来に幸多かれと願っていた。と同時に、子どもたちの道徳性がこの年輪のように一年一年の積み重ねで育まれることへの期待を重ね合わせていた。そのような期待の実現には道徳教育の校内研修が重要な鍵であると考える。
学校現場における道徳教育に関する校内研修の主な内容には、相互授業参観や授業研究等の多様な在り方がよく散見される。それに加えて、①全体計画等の共通理解、②理論研修(座学として)、③道徳科の授業で活用できる演習や実践的なワークショップ、④環境づくりや作業等も、各校の実情に応じて展開されている。最近では、校内で個人研修ができる環境づくりにも工夫がみられる。例えば、道徳教育コーナーが設置されて、道徳教育関連図書や過去の研究紀要、道徳教育に関する各調査分析のファイル、各研修会案内等が整備されている学校も増えてきているのではないだろうか。
最後に、道徳教育に取り組まれる先生方への期待をこめて、様々な研修の場で次の3点のことを意識してほしい、大切にしてほしいとお願いしているので紹介したい。
 ①道徳科の授業については、授業を見て分析する力、授業者や参観者を成長させる力、必要とあれば授業を見せる力を意識してほしい。
 ②道徳教育の視点では、学校経営における道徳教育の視点、諸計画の見直しや道徳教育をみる視点、情報伝達や状況の共有の視点を意識してほしい。
 ③人間としての倫理観。子ども達の前に立つ教師として、一人の人間として自分をどう磨くかということである。教材研究を通して、自分自身の道徳性、人間性をみつめることを意識してほしい。教師も一人の人間、人として子どもと一緒に育つと言うことを日々の中で大切にしてほしい。
本著が各校の道徳教育に関する校内研修の活性化や推進の一助になれば幸いである。さらに、校内研修の推進とともに子どもたちの人格の基盤である道徳性が育成されることを願うばかりである。
  植田 和也

【目次】
はじめに
第1章 道徳教育の充実に向けた校内研修の重要性
 Ⅰ 校内研修の充実と組織としての取組
 Ⅱ 教員の意識向上につなげる校内研修
  Ⅲ 道徳教育校内研修を始めるための再確認
  thinking 授業における悩みや課題の明確化
第2章 校内研修充実のために大切にしたいこと
  Ⅰ 内容項目を理解することの重要性
  Ⅱ 内容項目の分析(感謝)
  Ⅲ 内容項目の分析(礼儀)
  Ⅳ 内容項目の理解に基づくねらいの設定
  Ⅴ 道徳教育を推進するリーダーへの期待
  thinking 自己評価や振り返りの支援の充実に
第3章 校内研修の実際
  Ⅰ 校内研修の工夫
  Ⅱ ICTを活用した校内研修の工夫
  Ⅲ 道徳科における「評価」に関する校内研修について
  Ⅳ 現代的な課題「情報モラル」に係る研修の開発
  Ⅴ 校内研修を支える行政としての取組
  challenge 円すい(三角)キャップをつくろう
第4章 校内で取り組んだ道徳科の授業実践
  Ⅰ 模擬授業による道徳科の授業づくりの事例
  Ⅱ 小学校第4学年での道徳科の授業実践事例
  Ⅲ 小学校第5学年での道徳科の授業実践事例
  Ⅳ 中学校第3学年での道徳科の授業実践事例
  Ⅴ 中学校特別支援学級での実践―初任者の授業力向上を願って―
  challenge これなら迷わない「どこから見ても同じだね心情円盤」づくり
第5章 道徳教育研修の多様な取組
  Ⅰ 道徳ラボ研修と研修教材の開発
  Ⅱ 30分研修の工夫
  Ⅲ 香川県小学校道徳教育研究会の研修
  Ⅳ 四国支部の道徳学習会
  Ⅴ 初任者研修での取組
  Ⅵ 教育センターとの連携研修
  thinking 道徳教育について聞きたいこと、知りたいこと
第6章 道徳教育の研修充実にお薦めの図書
おわりに
執筆者一覧

【著者紹介】
〔監著者〕
七條 正典
〔編著者〕
植田 和也
浅部 航太
清水 顕人
鈴木 賢一
小島 啓明
〔著者〕
石﨑 正人
日下 哲也
近藤 広理
佐々木 啓祐
篠原 弘樹
高橋 史弥
新居 淳嗣
西山 伸二
西吉 亮二
野口 裕紀
森 有希
〔イラスト〕
佐々木 啓祐