人生100年たのしく健康づくり(上)
ISBN:9784863872042、本体価格:3,000円
日本図書コード分類:C1047(教養/単行本/自然科学/医学薬学)
383頁、寸法:148.5×210×21mm、重量550g
発刊:2025/04

人生100年たのしく健康づくり(上)

【まえがき】
「調査月報」という雑誌があって、しかも香川県の経済の中枢を担っている百十四銀行関連の百十四経済研究所(旧香川経済研究所)から発行されており、日本、あるいは香川県の経済の現状と動向を分析・解説したものだという。その雑誌にMy Healthという健康に関するコラムがあり、香川大学名誉教授の平峯千春先生を介して執筆のお話をいただいた。その際には、連載するといったお話ではなかったように憶えている。ところが、書き始めてみると医師としての知識の整理になるだけではなく、何気なく過ごしていた身の回りのことにも、意外と最先端の医学に直結していそうな事実が隠れていることに気が付いて、楽しみながら書き綴っている自分に驚きもする。出張などの予定を勘案して執筆日を決めると、その一週間前あたりから頭の中に内容をイメージする。予定日には神経を集中して、そのイメージを一気に吐き出すのも、脳にとっては心地良い。男子たるもの経験することはできないが、女性が出産を終えた直後には、それと似かよった感覚を味わっているのだろうか。こんなことを繰り返しているうちに、月に一度の習慣になっていつの間にか連載という言葉にも抵抗がなくなった。
香川大学医学部(旧香川医科大学)の創設に携わったこともあって、長く超多忙の日々を過ごしていた。そのため、研究の幅を広げることを目的とした海外留学ができるほどの余裕が持てるようになったのは、既に30代の最後になっていた。遅い米国留学になったので、子供たちの学校の問題もあって、迷ったあげくの単身赴任にした。お陰でやりたいように研究もできた上、日本語をしゃべることのない社会で生活するという人生最大の経験もできた。3カ月に1度、1週間程度帰国する。その際には、家族みんなが大歓迎をしてくれて、その度に家族の有難味も痛感した。
このような全く異なった社会での二重生活をしていると、頭の中の妙な感覚に気付くようになる。日本での生活と米国での生活がそれぞれに連続している。例えば、日本を離れる時に、「あれは、どうなったかな」と家内と話をする。3カ月後に帰って来た時、「あれは、こうなった」と会話が連続している。極端に言えばこんな具合で、米国での生活についても同様に独立して連続している。
今、完全帰国してもう20年を経過し、診療とちょっとだけ研究に従事している。診察室の中では、病気のこと、予防のこと、そのためにはどんなことに気を付ければ良いのかなどを、物に依ってはコピーした資料も付けて説明している。しかしながら、である。次の診察の時には、あれだけ頑張って説明したにも拘わらず、日常生活では活かされていない。そんな時に思い出すのが、留学時代の経験だ。診察室の中は中、外は外で物語は続いているのに違いない。そんな思いがこのコラムには反映されている。日常の何気ない生活の中にある健康への手がかり、それに続くちょっと難しいかもしれない話、気楽に読み終えて大事なことがちょっとだけでも頭に残り、健康と元気を維持できる。診察室の中と外を繋ぐ、そんな思いを込めて書き続けている。(2014年6月号掲載)
20年近く書き続けていると、さすがに医学の進歩も目に見えるほどに大きくなってくる。冊子としてまとめるために読み返していると、この考え方は既に古いか? と思えるような記載も、そんなに多くはないにしても、少しだけ引っ掛かりがある。でも、医学という人の命に関わる分野で、それゆえに慎重を期して臨床の場に登場した事例ですら、その後の検討でたったの20年の間に変わってしまうという進歩の速さ、あるいは絶対的という事実の有り様にも興味がある。そんな観点からでも日常の中にある健康のヒントを見つけ出せれば、筆の勢いも衰えることがないと感じている。

【目次】
まえがき/「食育」を考える/医療とサイエンス/酸素のストレス/桶屋が儲かる話/噴水に思う/「A」と「The」/ケンタッキーとミシシッピー/遺伝子の記憶/茶人の足/球春たけなわ/名付け/卵の黄身/「麺」と「餅」/夏の夜の夢/スポーツマンシップ/ちょい悪/時は今/円高・ドル安/「変革」、その大小/個々遺伝子/一日、一万歩/計画的ご利用/病は気から/鶏か卵か?/心の音/「し」/万病の元/インフルエンザ/MacintoshとWindows/骨の健康/「肥り方」あれこれ/デフレ/生体制御/「痩せんといかんなー」/糖尿病あれこれ/百薬の長/「食育」と「ダイエット」/不老のススメ/真夏の快眠/日進月歩/化学の世界/少子高齢化対策/「あつい」/「さむい」/三寒四温/健康と復興/暗算の効用/足の健康/美食の仕方/徒然なるままに/菜園からの恵み/危機管理/ステップアップ/「なかなか」の話/物流確保/絆と財政再建/流行/習性/春の爽快/地震・雷・火事・親父/「デインジャラス」な良い話/バイオリズム/時の移ろい/「適度」のすすめ/羽の違い/マメの話/健康は日常にあり/環境と遺伝子/相棒/新年度の始まり/紆余曲折/過ぎたるは及ばざる/苦あれば楽あり/暑さ対策/昔々あるところに/秋の予感/日々の過ごし方/話のタネの話/吾輩は患者なり(一)/洋の東西/昭和は遠くになりにけり/食事の作法/吾輩は患者なり(五)/七年目の ○○/茶会よもやま話/ポパイの力/台風対策/程良いお味の話/長持ちの秘訣/先手必勝/風邪は万病の元/日々の生活/春の匂い/精神年齢の効用/名脇役/大江戸散策/夏季趣味的畑仕事/日常からの脱却/塞翁が馬/千里の道も一歩から/秋の夜長に思う事/品の変わり方/自然の中の不均一/冬の過ごし方/教育の重み/血圧あれこれ/仲良き事/復活への第一歩/良い夢は良い食事から/晴耕雨読の効用/あとがき

【著者紹介】
〔著者〕
水重 克文