近想遠望VI 続-ある脳外科医の残日録-
ISBN:9784863872110、本体価格:1,364円
日本図書コード分類:C0023(一般/単行本/歴史地理/伝記)
80頁、寸法:148.5×210×7mm、重量154g
発刊:2025/10

近想遠望VI 続-ある脳外科医の残日録-

【はじめに】
私は約40年間、脳神経外科医として主に大学で教育研究診療、そして人材育成に携わってきました。退職後、JA香川厚生連で二つの総合病院の運営と再開発に関わり、その後68歳で香川大学学長として大学改革に心血を注ぎ、75歳ですべての公職を辞しました。
コロナ禍の間、蟄居の生活を活用して、私の生きてきた軌跡を「近想遠望」と題して、拙文を5冊に分け上梓させて参りました。その度にタイトル「近想遠望」の意味について質問を頂きました。このタイトルはまったく私の造語で、自身の小さな経験や挫折から得られた知識や教訓を元に、社会の現状や将来に対する自身の想いや後輩に対する激励のメッセージを真摯に書き述べてきたのでした。
次第に馬齢を重ね社会を広く俯瞰する立場になってくると、社会で活躍されている色々な職業の人生の達人にも多くお会いする機会があり、その度に自分の住んできた世界が余りにも小さかったことに気付かされました。そうなのです。時間の過ごし方・心のチャンネルを切り替える必要があったのでした。
なんと小さな穴から社会を見てきたのかと冷や汗が出るのです。
正に「蛸壺や はかなき夢を夏の月」(松尾芭蕉)だったと思います。
これだけ社会の価値感が多様化している今、複眼的な視野が必要になってきます。過去に上梓した本を読み返すと、自叙伝が多く、私の考えていた「遠望」については残念ながら記述が少なく、そこにもっと光を当てねばと気付いた次第です。
83歳を迎え、過去の自分にこだわらずにこれから生きてゆく若者がどう考え行動すればよいのか、そして新しい日本の形をより良くするにはどうすればよいのかなどについて、少しく私見を書かせていただきたいと思い至ったのです。
その契機として、過去の拙著にも記しましたが、定年退職後に始めた四国遍路巡拝の旅(現在11回目)によって、医療専門の世界とは全く別の世界が見えて来たことが、心の在り方に大きな変化をもたらしたのです。またいわゆる後期高齢者になったころから、私の死生観が変化してきたことも、本書を上梓する契機になったことは間違いありません。
本書では、これから考えられる自然や社会の在り方、次世代の若者に向けてのメッセージ、専門であった医療界の将来、JA香川の関連組織に在籍していた関係上、食料安全保障、そして私が夢見る日本の将来像について触れてみたいと思います。

【あとがき】
現在この原稿を書いている間にも、世界中で戦闘や飢餓のため多くの民が住む家を無くし、食料不足のため命を失っています。「人類は皆兄弟」今他国の人々を殺傷している独裁者は、天上に召された時に閻魔様に何と申し開きをするのでしょうか。日本は幸い、戦後80年間その様な不幸を経験していません。現在の世界情勢を見渡すといつ何時、世界的混乱の状況に巻き込まれるか分からない状態です。平和な日本を希求する一人として、私なりの考えを書かせていただきました。高齢になりいつ天に召されるか分かりません。今は唯今の安寧な生活が続くように祈るばかりです。私が願う日本の在り方についても一度真剣に考えて頂ければ幸いです。一笑に付すのは簡単ですが、さて将来何かのヒントになれば良いのですが……
私とほぼ同じ時代を生きてこられた俳優の吉永小百合さんの『「戦争しない国」今後も』の願いは、私も全く同感です。
その他、若者へのメッセージ、医学部の後輩達に今後の変化を予想して、私の経験から対応すべき考えも記しました。
現在、令和の米騒動と注目されている食料安全保障について、解決に向けた提言にも触れました。
巻頭にも書きましたが、それらは私が生涯で経験した個人的なあらゆる知見に基づいており、一つの考えとして読者の皆さんの参考になれば望外の喜びです。

【目次】
はじめに
第一章 地球環境の変化
 一.地球全体の変化
第二章 高校卒業後の修学の基本姿勢
 一.若者の特権
 二.多くの人々と関り複数の生きがいを持つこと
第三章 医学部で医師・研究者を目指す後輩へ
 一.大学で学習するという事
 二.IT時代の医療への活用と考え方
 三.受療者の変化
 四.海外にも目を向けて
 五.医師の働き方改革
 六.再びリハビリテーション医療の重要性について
 七.後事を託す指導医への申し送り
 八.日本医師会の提言
 九.医療現場は崩壊の直前?
第四章 日本の食料安全保障の未来
 一.日本の現状
 二.耕作地の減少
 三.農業を支える人材を如何にして増やすか
第五章 私の夢見る将来の日本像
 一.江戸時代の鎖国政策に思う事
 二.鎖国以降の日本の歴史
 三.現在の日本を囲む世界と日本の現状
 四.日本国を他国に侵略されない策とは
 五.永世中立国をめざす日本
あとがき
謝辞

【著者紹介】
〔著者〕
長尾 省吾